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2.運動療法|6つの強み|偕行会グループの透析医療
偕行会の透析 6つの強み

2.運動療法

体力や筋力が低下しやすい透析患者様の「10年後の生活」を支えるため、継続的な運動を促進しています。

偕行会グループでは2012年より透析中の運動療法を開始しています。
現在では偕行会グループの全透析施設で行っており、これまでに1,800名以上の患者様が
運動療法に参加されています。

透析中の運動療法とは

透析中の運動療法とは、透析中に下半身を中心とした安全かつ効果的な運動です。
透析を続けていると、体力・筋力は急速に低下するため、運動はとても重要です。特に透析患者様にとっては、「体力を維持すること」「運動を継続すること」は生命予後(元気で長生きすること)を大きく改善させることが証明されています。足の筋肉がつけば転びにくくなり、日常生活も楽に過ごせるようになります。
透析中の運動は、体力や筋力をつけるだけでなく、透析中の血液循環が高まり「透析の質」が向上します。すなわち、透析と運動を併用することにより、良い透析ができ、合併症なども起りにくくなる効果が期待できます。透析中の運動は年齢に関係なく、様々な効果が得られ、透析時間の有効活用につながります。日常生活を送るうえで、ギリギリの体力では、入院を転機に通院困難になる可能性が高くなります。「生涯自立した生活を送る」ためにも、筋肉を蓄える「貯筋」は必要不可欠です。

運動療法の流れ

偕行会グループでは医師の判断のもと、健康運動指導士や理学療法士がプログラムを作成し、透析中に安全にできる運動を提供しています。

  1. 体力評価

    現状の体力を確認し、どの程度の運動が行えるかを判断します。

  2. 運動開始

    30分程度の運動を、透析前半に実施します。

  3. 定期評価

    定期的に体力測定を行い運動の効果判定を行います。

運動療法の意義

~なぜ運動を行わないといけないのか?~

透析患者様の体力は透析をしていない人の半分

1回の透析4時間×週3回=12時間の脱重力状態

※脱重力状態とは重力がかかっていない状態のこと

透析中はベッドレストの状態が続くため脱重力状態と言えます。筋肉は重力がかかっていないとどんどん減ってしまう性質があり、1日(24時間)の脱力状態で2年分の老化が起こると言われています。年間で換算するとなんと26日分もの脱重力状態が続いていることになります。
その他にも栄養状態の問題、炎症や内分泌異常なども要因となり、透析患者様の筋肉は減りやすくなっています。これらの要因により、透析患者様はフレイル※の割合が高く、進行も早いことが偕行会グループの調査で分かっています(図1)。

※フレイルとは加齢により心身が老い衰えた状態

図1:透析患者のフレイルの割合と進行率について

平均年齢69.9歳 n=2132(偕行会2018年・2020年度調査)

円グラフ:Nonフレイル8%、プレフレイル54%、フレイル。54%が2年後にはプレフレイルに進行、30%が2年後にはフレイルに進行する。

生命予後に関連

運動習慣のない場合や体力・筋力の低下した透析患者様は、死亡リスクが高くなることが、多くの報告により分かっています。
偕行会グループの調査でも「運動習慣なし」・「歩行能力が低い」・「筋力や筋量が低い」場合、死亡リスクが高くなることが確認されています。

運動療法の効果

対象:運動習慣のない透析患者171名
   運動療法実施透析患者106名

  • 1年間の筋力の変化

    グラフ:運動療法実施…5%アップ、一般的な平均…1.5%ダウン、運動習慣なし…4%ダウン

    一般的な加齢に伴う筋力の減少は年間1.5%程度ですが、運動習慣のない透析患者様は4%も減少します。これに対し、透析中の運動を継続すれば5%の向上が得られます。

  • 1年間の筋肉量の変化

    グラフ:運動療法実施…3%アップ、、一般的な平均…0.5%ダウン、運動習慣なし…2.5%ダウン

    筋肉量も、一般的な加齢に伴う筋量の減少は年間0.5%程度ですが、運動習慣のない透析患者様は2.5%も減少します。これに対し、透析中の運動を継続すれば3%の向上が得られます。

他にも、持久力・バランス能力・歩行能力の向上など身体機能は総合的に改善します。さらには精神心理状態(うつの改善、QOL(生活の質)の上昇)の改善も期待できます。

偕行会グループのこだわり

~すべては患者様の「10年後の生活」を支えるために~

  • 成果のフィードバック

    定期的な運動の効果測定にて、患者様の状態がよくなるなどの成果を患者様へ伝えます。さらに、具体的な目標設定を行うことや、運動継続の障壁を確認し、ハードルを下げることで、患者様が前向きに運動を取り組めるようサポートしています。

  • 巡回スタイル

    健康運動指導士や理学療法士が、各施設を巡回し、患者様の体力チェックや運動の適否を判断し、運動プログラムを作成します。日常的な運動療法の管理は、DVDなどを活用しながら看護師や臨床工学技士などが実施します。それぞれの専門分野を軸に双方の意見を言い合って、患者様のためにどうすればいいのか、チームで考えながら運動療法に取り組んでいます。

  • 運動プログラム

    運動用ゴムチューブを使用し、レジスタンス運動※を中心とした内容で行っています。
    オリジナルのDVDを使用し、安全かつ効果的な運動を行います。
    定期的な効果測定にて、運動効果の判定を行う共に、プログラムの見直しを行います。

    ※レジスタンス運動とは、筋肉に負荷(抵抗)を与え、筋力や筋持久力といった骨格筋機能の向上に主眼をおくトレーニング手段の総称。いわゆる「筋トレ」のことです。

偕行会グループの運動療法監修者

森山 善文

詳しいご紹介はこちら

森山 善文

透析患者の体力及び身体活動量は透析をされていない方の半分程度まで低下しています。体力や活動量の低下がQOL(生活の質)の低下や死亡リスクと関連することも分かってきました。加えて透析患者の高齢化も年々進んでおり、身体的虚弱である「フレイル」を認める患者も増加しているため、運動療法の必要性は益々高まっていると言えます。「生涯自立した生活を送る」ためにも、筋肉を蓄える「貯筋」が不可欠です。透析中に行う運動療法は、短時間で無理なく行え、その上高い効果が得られます。ぜひ皆様で実践していただき、元気で健やかな生活が送れるようになることを願っております。

偕行会グループ 透析運動療法統括部 部長
インドネシア国立ハサヌディン大学 客員教授

資格
健康運動指導士
腎臓リハビリテーション指導士
心臓リハビリテーション指導士
所属
日本腎臓リハビリテーション学会(代議員)
透析運動療法研究会(世話人)
日本透析機能評価研究会(世話人)
日本臨床運動療法学会(評議員)
日本心臓リハビリテーション学会